TEXT LOOP(創作小説ごっこ)

1話完結の短編小説シリーズを執筆しております。 暇つぶしにちょうど良い作品を投稿中です♪

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『モグラの潜む街』第5話(今更プロローグ)

プロローグ ― ツチノコ・ワークス ― 地下街ノウアには、昼も夜もない。 照明が淡く灯り、時刻は常に曖昧だった。 ここでは時間よりも、温度と湿度が生活の単位になる。 金属とコンクリートの隙間に、電気と息づかいが流れていた。 その街の片隅に、“ツチノコ…

『モグラの棲む街』第4話

モグラ、地上にバグを見る ノウア地下街、第七層。 昼夜の区別はないけれど、コーヒー屋の香りが漂い始めたら、それは“午後”の合図。 モグラはパイプに背中を預けて、古い端末をいじっていた。 指先が光るキーボードを叩くたび、壁に反射して文字が踊る。 「…

『モグラの棲む街』第3話

地下街〈ノウア〉第八層。 昼時のフードストリートは、いつもより人が多かった。 スチーム麺、合成コーヒー、昆虫プロテイン串――。 雑多な匂いが混ざり合い、まるでスパイスそのもののように街が息づいている。 「珍しいね、あなたが昼に外に出てるなんて。…

『モグラの棲む街』第2話

静かな通路の音 地下街〈ノウア〉の朝は静かだ。 天井の人工照明が淡いオレンジに切り替わり、人の流れがゆっくり動き始める。 通勤ラッシュ前のわずかな空白。 モグラは第七層のカフェで、合成コーヒーを飲みながらノイズ混じりの音を聞いていた。 「……妙だ…

『モグラの棲む街』第1話

ネオンの下の依頼人 地上を知らない人間が増えている。 空の色も、風の匂いも、もう昔話だ。 だが、この地下街都市〈ノウア〉に生まれた者たちは、地上の喪失を惜しまない。 ここには光がある。ネオンの灯り、デジタル広告の色、そして無数の人間の気配。 地…